こんにちは。
施設ケアマネや介護職の方への情報発信をしているカメフクです。
このブログでは、現場で役立つ知識や考え方を発信しています。
介護の仕事をしていると、記録について悩みを抱える方は少なくありません。
「利用者さんのことはよくわかっているのに、いざ記録を書こうとすると手が止まってしまう」
「口では説明できるのに、文章にすると何を書けばいいかわからなくなる」
記録が書けないのは、介護の知識や経験が足りないからではありません。
書けない人には共通した理由があります。
この記事では、その原因を明らかにしたうえで、
経過記録をスムーズに書くための考え方と実例を紹介します。
※施設により『介護記録』『経時記録』『ケース記録』などと呼ぶこともあります
介護記録とは
介護の現場では、さまざまな種類の記録が存在します。
利用者の経過を記録する経過記録、介護計画(個別援助計画書)、フェイスシート、ヒヤリハット報告書、会議録など、介護職が関わる記録物のすべてが、広い意味での介護記録といえます。
記録には、
- チーム間での情報共有
- 家族との情報共有
- 介護の振り返り
- 提供した介護の事実
- 事故やトラブルが起きたときの証拠
などの目的がある重要なものです。
このなかでも、現場の介護職が最も頻繁に書くのが「経過記録」だと思います。
この記事では、この経過記録に焦点を絞って解説します。
なぜ記録が書けないのか|書けない人の共通点
記録が苦手という方に話を聞くと、
「何をしたかは覚えているのに、うまく言葉にできない」
「いつものことだから、特変なしでいいか」
という声をよく耳にします。
これはなぜでしょうか。
介護職は現場のなかで、利用者の状態を読み取りながら、適切なケアを選択しています。
そのプロセスの多くは、経験を重ねるうちに無意識のうちに行われるようになります。
例えば、食事介助の場面では、口の開き具合や、飲み込みの速さを見て「自然と」ペースを調整している。
そこには日々の観察・判断・実践という「思考のプロセス」があるはずですが、意識せずに行動してしまっているのではないでしょうか。
つまり、
記録が書けない、苦手な人の共通点は、
「頭の中の思考のプロセスが言語化されていないこと」
にあります。
では、どうしたら思考のプロセスが言語化できるようになるのでしょうか?
記録を書くための考え方|5つの要素に分解する
経過記録を書きやすくするコツ、思考のプロセスの言語化のコツは、
書く内容を分解することです。
提供した介護の場面を、以下の5つの要素に分解することを意識するだけで、
何を記録に書けばいいか明確になります。
| 5要素 | 内容 |
| ① 状況 | そのとき、どんな場面・時間帯だったか |
| ② 利用者の様子 | 表情・言動・身体の状態はどうだったか |
| ③ 行ったケア | 具体的にどんな介助・対応をしたか |
| ④ 結果 | ケアの後、どのような変化があったか |
| ⑤ 判断・理由 | なぜそのケアを選んだのか |
この順番で情報を整理すると、自分が何を観察して、どう考えて、何をしたかが自然と文章になっていきます。
介護の場面で「自分は今、何を見て、何を考えているか」を問いかける習慣をつけ、
「なんとなくそう感じた」を「〇〇だったから〇〇と判断した」に変えることで、
専門的な視点のある記録につながります。
この考え方は、医療・介護現場で広く使われている記録形式「SOAP(主観的情報・客観的情報・アセスメント・計画)」とも共通する部分があります。
SOAPは問題解決に向けた計画立案まで含む医療現場で多く使用されている形式ですが、ここで紹介する5要素は、介護職が日常の介護を記録することに特化してシンプルにしたものです。
SOAPについて詳しく知りたい方は、あわせて参照してみてください。
実例|介護場面別の経過記録
入浴時の記録
NG:A氏がお風呂からあがったあと、疲れた様子だったので、椅子に座ってもらい、水をあげると飲んだ。車椅子で居室へ案内した。
OK:15:00に入浴後のA氏が独歩で浴室を出る場面を確認。歩容が不安定であったため、声をかけると「お風呂につかりすぎたかな。少しのぼせたようだ」と話す。転倒リスクも考えられるため、椅子に座ってもらう。座位で血圧測定し120/70mmHg、脈拍60/分。飲水を促したところ了承されたため、水を提供し100ml摂取。車椅子で居室へ案内し臥床するまで見守る。看護師に情報共有する。
【入浴時の記録ポイント】
- 疲れた様子→歩容が不安定(客観的な表現)
- 利用者の言葉を「」で引用する(主観的な情報)
- バイタルの数値(客観的)
- 「転倒のリスクを考え」座ってもらう、臥床まで見守る(思考の言語化)
- 看護師に情報共有まで記録(継続観察の必要性を示す)
食事時の記録
NG:B氏の朝食介助の場面で、嚥下がすすまない。1時間程度かけても5割程度の摂取。眠っている様子だったので中止した。
OK:B氏の朝食介助の場面で、日頃10割摂取できているが、今朝は覚醒状態が悪く、食物が口腔内に残留し嚥下がすすまない。タッチングや声掛けの刺激により、覚醒を促したが改善しない。時間を空けて再度食事介助を試みるが、覚醒状態は改善しない。誤嚥のリスクが高いと考え、朝食は5割で中止した。夜間の担当者からの申し送りから、夜間覚醒していたとの情報があり、朝食時の覚醒不良につながった可能性が考えられる。日中の覚醒状態の継続した観察が必要。
【食事時の記録ポイント】
- 眠っている→覚醒状態が悪い(客観的な表現)
- 日頃との比較(普段は10割→今日は5割という気づきを記録する)
- 「誤嚥のリスクが高い」と考え食事を中止(思考の言語化)
- 申し送り情報の活用と継続観察(チームでの情報共有)
転倒時の記録
NG:C氏が廊下で転倒しているところを発見。すぐに看護師に連絡した。
OK:23:00、廊下でC氏が床に座り込んでいる場面を発見。「どうされましたか」と声をかけると「転んだ」と話す。全身を確認し外傷なし。頭部打撲の可能性も考え、その場で安静にしてもらい看護師に報告。看護師到着後、バイタル測定し血圧130/80mmHg、脈拍72/分、意識清明。看護師の判断のもと、居室へ移動し臥床。家族へ転倒の報告を行う。
C氏は入所初日であり、環境変化による混乱が生じた可能性がある。転倒前の行動については確認できていないが、認知症による場所の見当識障害があるとの情報から居室の把握ができず、廊下を移動していた可能性が考えられる。引き続き離床時の見守りと、環境への適応状況を観察する。
【転倒時の記録ポイント】
- 発見時の状況を客観的に(「転倒している」でなく「床に座り込んでいる」)
- 本人の言葉を「」で引用(主観的な情報)
- 頭部打撲リスクを考えてその場で安静に(対応の事実、思考の言語化)
- 看護師・家族への連絡まで記録(チームと家族間での情報共有、事故対応の証拠)
- 入所直後・認知症という背景からの考察(思考の言語化)
まとめ
- 記録が書けない原因は、頭の中のプロセスが言語化されていないことにある
- 経過記録は「状況・利用者の様子・ケア・結果・判断」に分解して書く
- 記録を書く習慣は、自分のケアを振り返る力につながる
- 介護記録は、専門職としての思考と実践を証明するものである
記録は「業務の負担」ではなく、
自分のケアを可視化し、専門性を示すための大切なツールです。
少しずつでも書く習慣を積み重ねることで、記録の質も介護の質も、確実に上がっていきます。


