こんにちは。
施設ケアマネや介護職の方への情報発信をしているカメフクです。
「分からないことがあったら、何でも聞いてね」
そう言ってもらえたのに、聞けない。
意地を張っているわけでも、遠慮しているわけでもなく、
そもそも、何を聞けばいいのかが分からない。
そんな状態になっていませんか。
介護の現場に入ったばかりの頃、これはとてもよく起こることです。
そして、周りからは「質問が出てこない新人」に見えてしまうので、
「やる気がないのかな」と誤解されることさえあります。
でも、これはあなたの性格でも、意欲の問題でもありません。
質問というのは、ある程度分かっている人にしか作れないものだからです。
相談できないのは、相談する気がないからではありません。
相談の中身が、まだ形になっていないだけです。
この記事では、その仕組みを整理したうえで、
「何を聞けばいいか分からない」状態から抜け出すために、今日からできることをお伝えします。
この記事でわかること
- 「何を聞けばいいか分からない」が起きる仕組み
- これが新人だけの話ではない理由
- 「相手のほうが詳しい」と感じたときに、聞きやすくなる考え方
- 質問が作れないときに、今日からできる3つのこと
- あなた自身が、聞きやすい場をつくる側になる方法
「何を聞けばいいか分からない」のは、あなたのせいではありません
質問は、分かっている人にしか作れない
少し不思議な話に聞こえるかもしれませんが、
現場で新人の方と関わってきて思うのは、
質問というのは、その分野をある程度知っている人ほど、たくさん作れるということです。
たとえば、経験を積んだ職員が申し送りを聞く中で、
「水分はどのくらい摂れていましたか」
「夜間は眠れていましたか」
といった問いが、自然と出てきます。
これは頭の回転が速いからではありません。
「ここを確認しておかないと、危ないかも、改善に繋がらないかも」という引き出しを、経験の中で持っているからです。
逆に、その引き出しをまだ持っていない人は、
目の前で何かが起きていても、そこが確認すべき場所だと気づけません。
気づけないものは、質問にできません。
研修でもよく言われる「気づき」は、この引き出しのことだと私は思っています。
つまり、あなたが質問できないのは、
知らないことが多いからではなく、「どこが分からないのか」を教えてくれる地図が、まだ手元にないからなのです。
だから「何でも聞いてね」は、実は難しい注文
先輩の「何でも聞いてね」は、間違いなく善意です。
私も指導する側になってから、何度も言ってきました。
ただ、この言葉には、実は前提が隠れています。
「あなたは自分の分からないところが分かっているはずだ」という前提
新人にとって、いちばん難しいのがそこですよね。
だからこの言葉を受け取ったとき、
「聞きなさいと言われたのに、聞けない自分はダメだ」と感じてしまう人がいます。
でも、それは順番が違います。
聞けないのではなく、まだ聞く材料が集まっていないだけです。
これは、新人だけの話ではありません
ここが、私がいちばんお伝えしたいところです。
「何が分からないのか分からない」という状態は、
新人だけに起こるものではありません。
- 別のフロアや別の事業所へ異動したとき
- 出産や介護で現場を離れて、復職したとき
- 記録システムや機器が新しくなったとき
- 役職が変わって、これまでと違う仕事を任されたとき
新しい場所に立ったとき、人は誰でもここを通ります。
私自身も、介護の現場を長く経験してからケアマネジャーになったとき、
同じところでつまずきました。
介護の仕事は分かっているつもりでいたのに、
ケアマネとしての実務になると、何を確認すべきかが分からない。
分からないことが多すぎて、質問の形にすらならない時期がありました。
利用者やご家族に聞いておくべきことが、聞けないままになったこともありました。
経験があっても、立つ場所が変われば同じことが起きるのです。
だからもし今、あなたがその真っ只中にいるとしても、
それはあなたが特別に飲み込みが悪いからではありません。
新しい場所に立った人が、みんな通る道です。
もうひとつ、聞けなくなる理由
「分からないことが分からない」に加えて、
もうひとつ、質問をためらわせるものがあります。
それは、「相手のほうが詳しい」という感覚です。
経験のある職員や、自分より専門性の高い人を前にすると、
質問することそのものが、失礼なような気がしてくる。
「こんな初歩的なことを聞いたら、呆れられるんじゃないか」
「忙しそうにしているのに、時間を取らせて申し訳ない」
そう思っているうちに、聞くタイミングが過ぎていきます。
私の感覚では、真面目な方ほど、この反応が起こりやすい印象があります。
これは、あなただけが感じていることではありません
実はこの2つには、どちらも名前がついています。
人が職場で「聞けなくなる」とき、恐れているものは4つに整理されています。
- 無知だと思われる … 質問したり、情報を求めたりするとき
- 無能だと思われる … ミスを認めたり、助けを求めたりするとき
- 否定的だと思われる … 気になることを指摘するとき
- 邪魔だと思われる … 相手の時間や手間をもらうとき
1つ目と4つ目が、さきほどの「呆れられるんじゃないか」「時間を取らせて申し訳ない」そのものですよね。
あなたが特別に気にしすぎなのではありません。
人が職場で聞けなくなるときの、よくある形なんです。
出典:Amy C. Edmondson『Managing the risk of learning: Psychological safety in work teams』(2002)
ハーバード・ビジネス・スクールが公開しているPDF(英語)
この4つの恐れが、職場全体でどう働くのかは、こちらの記事で詳しく書いています。
聞くことは、あなたの評価の話ではありません
ただ、ここで一度、見方を変えてみてほしいのです。
確認しないまま進んでしまうと、その影響は目の前の利用者に向かいます。
だからこそ、聞くことは迷惑をかける行為ではなく、仕事の一部なんです。
新人が確認しながら進めるのは、職場にとっても正しい状態です。
「申し訳ない」と思う必要は、本当にありません。
今日からできる3つのこと
① 「ここまでは分かる」と伝える
「分かりません」とだけ伝えると、先輩も何から答えていいか分かりません。
そこで、どこまで分かっていて、どこから分からないのかで、区切ってみてください。
- 「ここまでは分かるのですが、この先が分かりません」
- 「手順は分かったのですが、なぜそうするのかが分かっていません」
- 「Aさんの介助方法は覚えました。Bさんも同じでいいのか分かりません」
言えるのは、ほんの少しの部分でかまいません。
「どこまで分かっているか」を伝えるだけで、質問は成立します。
これは、「もう一度聞けない」と感じたときの対処法でお伝えした「疑問を整理してから聞く」の、ひとつ手前の段階です。
整理できるほど材料がそろっていないときは、
「途中まで分かっている」という事実だけを渡してみてください。
② 見たことを、そのまま言葉にして残す
質問が作れないのは、材料が足りないからでした。
では、その材料はどこにあるかというと、あなたが見たものの中にあります。
ここでひとつ、大事なコツがあります。
メモすることです。
「これは書くほどのことかな」と、自分で判断しないこと。
新人のうちは、何が重要かの物差しができていないのが普通です。
だから判断しようとすると、ほとんどのことが「たいしたことない」に分類されてしまいます。
判断せずに、見たままを書いてみてください。
- 「朝食のとき、スプーンを右手から左手に持ち替えていた」
- 「入浴を勧めたら、いつもより長く迷っていた」
- 「面会のあと、部屋から出てこなかった」
その場では、意味が分からなくてかまいません。
これを3日、1週間とためていくと、あるとき形が見えてきます。
「これ、いつもそうなんでしょうか」
この一言が、立派な質問です。
そして、こうして見たことを言葉にする習慣は、そのまま記録の力になります。
正式な記録に何をどこまで書くかは場面によって変わりますが、まずは「見たことを言葉にする」練習からで大丈夫です。
記録の書き方については、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。
③ 分からない自分を、責めない
3つ目は、心の持ち方の話です。
「分からない」と「できない」を、混ぜないでください。
分からないのは、まだ知らないというだけのことです。
あなたの能力や、向き不向きの話ではありません。
そして、これは実務的にも大事なことなんです。
自分を責めている間は、質問が出てきません。
「なんで自分はこんなに覚えが悪いんだろう」と考えているとき、
頭は自分の内側に向いています。
その状態では、目の前の利用者を見る余裕がなくなってしまいます。
相手を大切にするためにも、まず自分を追い詰めない。
これは、わがままでも甘えでもありません。
長く働き続けるために必要な、専門職としての姿勢だと私は思っています。
あなたも、聞きやすい場をつくる側になれます
最後に、少し先の話をさせてください。
今は聞く側のあなたも、半年、一年と経つうちに、
いつか「自分より後に入ってきた人」と出会います。
そのとき、思い出してほしいことがあります。
質問が作れない人には、こちらから問いかけ方を変えてみましょう。
「何か分からないことある?」と聞いても、
相手はまさに「分からないことが分からない」段階にいます。
代わりに、こんな聞き方をしてみてください。
- 「今日、変だなと思ったことあった?」
- 「AとB、どっちだと思う?」
- 「私が新人の頃、ここで結構つまずいたんだけど、どう?」
答えの形を、こちらから用意してあげる。
これだけで、相手はぐっと話しやすくなります。
環境というのは、先輩も新人も含めた、そこにいる人たちがつくっているものです。
あなたが「こうしてもらえたら楽だったのに」と感じたことを、
次の人に渡してあげてください。
それが、聞きやすい職場をつくる最初の一歩になります。
まとめ
- 質問は、ある程度分かっている人にしか作れない。作れないのは、あなたのせいではない
- 「何が分からないか分からない」は、新人だけでなく、異動・復職・新しい業務でも起こる
- 「相手のほうが詳しい」と感じると聞きにくくなるが、確認しないと困るのは目の前の利用者
- 「ここまでは分かる」と伝えるだけで、質問は成立する
- 判断せずに見たままを書きためると、それが質問の材料になる
- 分からない自分を責めない。責めている間は、質問も出てこない
- あなたも、後から入ってくる人にとっては「場をつくる側」になれる
最初の時期は、誰にとってもしんどいものです。
でも、あなたが今そこで戸惑っているのは、
ちゃんと目の前の仕事に向き合っている証拠でもあります。
分からないことは、これから少しずつ分かるようになります。
焦らず、一つずつで大丈夫ですよ。
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