こんにちは。
施設ケアマネや介護職への情報発信をしているカメフクです。
会議やカンファレンス、申し送りの場で、意見を言いたいけど、言えなかったことはありませんか。
私はあります。
そして、後になって
「やっぱり言っておけばよかった」
と思うんですね。
この記事は、そんな場面の話です。
言えなかったのは、勇気があるかないかだけの問題ではありません。
会議だけではなく、仕事のなかで、意見を飲み込んでしまう場面があると思います。
ただ、それは何となくそうなっているわけではありません。
そういう雰囲気や風土が生まれる仕組みがあります。
そこを先に知っておくと、次の会議やカンファレンスで、少しだけ違う動きができます。
この記事でわかること
- 発言したいけどやめてしまう、よくある場面
- なぜ、会議での一言は、思っているより重く感じるのか
- 意見がくい違うとき、実際に違っているのは何なのか
- 言いにくさを感じているのは、自分だけではないということ
- 相手が何を心配しているかを、確かめるための手掛かり
- 今日からできる3つのこと
発言したいけどやめたことはありませんか
たとえば、こんな場面です。
- 「その方法だと、たぶんうまくいかないと思う」と感じたけれど、言わずに終わった
- 「最近、少し様子が違う」と思っていたのに、話が先に進んでしまった
- 一度言いかけたけれど、うまく言葉にならず、「いえ、大丈夫です」と引っ込めた
会議が終わってから、廊下で同僚に言うんですよね。
「さっきの件、ちょっと気になってて」
意見を持っていなかったわけではないんです。
その場では、言えなかった。
そして、これが何度か続くと、だんだん最初から言わなくなります。
「どうせうまく説明できないし」
「まあ、いいか」
と思うようになる。
これは、その人の性格だけではありません。(もちろん性格も影響すると思いますが)
言葉を飲み込ませる、場のつくりの問題です。
会議で言う一言は、思っているより重い
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
会議で口にする一言は、自分で思っているよりも重いんです。
たとえば、利用者の移動方法について、このように言ったとします。
「その方法では、危ないと思います」
一見すると、事実を指摘しているだけに見えます。
その一言には、こんな心配も含まれているかもしれません。
「私は、転んでしまわないか、そこがいちばん心配です」
「あなたの方法では、転んでしまうかもしれません」
事実を伝えているつもりの一言に、自分が何を心配しているか、自分と相手の意見の違いの指摘が含まれることがあります。
ここで、返ってくる言葉を考えてみます。
「どんな場面を見て、危ないと感じましたか」
と返ってくれば、自分が見たことや心配を説明できます。
でも、説明する前に、
「心配しすぎでは」
と返ってくると、大切にしていること(価値観)まで退けられたように感じます。
意見が通らないことと、心配を聞いてもらえないことは、違います。
「どうせ、聞いてもらえない」
言いたくても、その不安がよぎる。
だから、発言しなくなるんです。
これは弱さではなく、自分を守るためのごく自然な反応だと思います。
同じ情報を見ていても、心配するところは違います
では、意見が分かれたとき、何がくい違っているのでしょうか。
見ていた場面や、持っている情報が違うこともあります。
そこは、まず確かめたいところです。
そのうえで、私の経験では、同じ情報を見ていても、心配するところが違って意見が分かれることがあります。
- 転んでしまわないか、が心配な人
- このまま歩けなくなってしまわないか、が心配な人
どちらも、その方のことを心配しています。
何を心配しているのかを出し合うと、くい違いが見えやすくなります。
同じ職種の中でも、心配するところは違います
ここは、けっこう大事なところだと思っています。
- 歩く力をつけてほしいと考える人と、いまは控えたほうがいいと考える人
- 食べることを続けてほしいと考える人と、いまの状態では危ないと考える人
同じ資格を持つ専門職でも、分かれます。
もし原因が「職種の壁」だけなら、同じ職種の中では分かれないはずです。
でも、分かれる。
つまり、言いにくさをつくっているのは、職種だけではないんですね。
「医師には言いにくい」「看護師には言いにくい」「上司には言いにくい」ではなく、
「自分と違うことを心配している人には、言いにくい」。
そう置き直すと、相手が誰であっても、同じように考えられます。
違う意見が返ってきても、自分への批判とは限りません
意見が返ってきたとき、「否定された」と感じることがあります。
私も、そう感じることがあります。
そんなとき、相手は自分が心配していることを伝えようとしているのかもしれない、と考えてみます。
意見がくい違ったとき、
否定されたのではなく、心配しているところが違うだけかもしれません。
そして、心配しているところが違う人(多様な専門職としての価値観)が集まっていることには、意味があります。
全員が同じところを心配しているチームがあったとしたら、
同じ方向に目が向き、ほかの大事なことを見落とすかもしれません。
違うところを心配している人がいるから、いろいろな角度から見ることができる。
多職種で集まる意味は、たぶんここにあります。
言いにくいのは、あなただけではありません
組織行動の研究に、こう整理されているものがあります。
職場で発言や質問をためらう背景として、次の4つの不安が挙げられています。
- 質問すると、無知だと思われるのではないか
- 間違いを認めると、無能だと思われるのではないか
- 異論を言うと、否定的だと思われるのではないか
- 自分の仕事への助言や意見を求めると、邪魔だと思われるのではないか
ここまでの4点は、Amy C. Edmondson『Managing the risk of learning: Psychological safety in work teams』(2002) による整理です。
ハーバード・ビジネス・スクールが公開しているPDF(英語)
心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
そしてこれは、介護の職場に限った話ではありません。
職種や立場にかかわらず、その人にとっての「言いにくい相手」「言いにくい場」があります。
つまり、言葉を飲み込むのは、あなただけに起きていることではないんですね。
言いにくいのは、専門職だけでもありません
もうひとつだけ、触れておきます。
ご本人やご家族も、言いにくい側にいます。
専門職が並んでいる場で、自分の希望を口にするのは、簡単なことではありません。
ここは、もっと大きな話につながっていくところです。
長くなるので、また別の記事で書きたいと思っています。
相手が何を心配しているか、確かめてみる
「話し合いましょう」「お互いを尊重しましょう」
こう言われることは多いと思います。
その言葉を実際の話し合いにつなげるために、私が大事だと感じていることがあります。
相手が何を心配しているかを、確かめることです。
相手の資格も、理解する手掛かりになります
相手の考えを理解する手掛かりとして、私がしてきたのは、次のことです。
相手の職種が、何を学んできたのかを調べてみる。
看護師は何年かけて何を学ぶのか。介護福祉士は何を学ぶのか。リハビリ職は?管理栄養士は?
学んできたことを知ると、相手がどんな点に目を向けているのか、考える手掛かりになります。
ただ、同じ職種でも心配するところは違います。その人が今何を心配しているかは、聞いて確かめる必要があります。
相手の専門分野を十分に勉強してからでないと、話してはいけないということではありません。
言いやすい場で、お互いの心配を確かめる
会議をよくするための工夫として、こんなことが挙げられます。
- 言いやすい場をつくりましょう(心理的安全性)
- 自分も相手も大切にする言い方をしましょう(アサーション)
どちらも大事です。
心理的安全性は、もともと、質問する・助けを求める・間違いを認める・新しい提案をするといったことをしても大丈夫だと思える状態を指す言葉です。居心地のよさとは別のものです。
ただ現場では、「言いやすい雰囲気や風土をつくろう」という掛け声として語られることが多いように感じています。
言いやすい場や言い方の工夫に加えて、お互いの心配を確かめることも大切だと感じています。
お互いの心配を出し合うことが、この方のケアを一緒に考える土台になります。
相手の心配(価値観)を、最初から知っている必要はありません。
話しながら確かめることができればよいのだと思います。
職場の「言いやすさ」そのものについては、こちらの記事で詳しく書いています。
今日からできる3つのこと
① 会議の前に、自分の心配を一行だけ書いておく
その場で考えようとしても、うまく言葉にならないことがあります。
会議の前に、こんな一行を書いておくのはどうでしょうか。
「このまま歩けなくなってしまわないかが心配」
たった一行です。職場で認められた方法で、個人が特定される情報を残さずにメモしておきます。
一行にまとめようとすることで、頭の中が言葉になり、考えも整理されます。
その場で急に言葉を探すより、伝えたいことをつかみやすくなります。
そして、書いた一行は、結論より先に言ってみてください。
「危ないと思います」だけでは、相手には結論しか届きません。
「私は、◯◯さんがこのまま歩けなくなってしまわないか、そこをいちばん心配しています。
そのうえで、転ぶ危険をどう減らせるか、相談させてください」
自分が何を心配しているかを先に伝えると、一緒に考えるための入口をつくりやすくなると思います。
会議中に言うのが難しければ、書いた一行を、事前に進行役や話しやすい同僚に渡す方法もあります。
記録を話し合いの材料にする話は、こちらの記事で書きました。
② 発言してくれた人に、まず感謝を伝える
発言するのは、思っている以上に気力のいることです。
発言にあたって、その内容について学習してきているかもしれません。
発言によって、批判されるかもしれない不安もある状態で、
発言してくれた人がいます。
まずは、その人に感謝を伝えることが、発言しやすい雰囲気や風土をつくることにつながります。
私は、発言した人にとって、これがいちばん嬉しいんじゃないかなと思います。
「私の言葉に耳を傾けてくれた」
良い解決策につながるかどうかは、その後の話し合い次第です。
それでも、まず受け止めてもらえるだけで、話し合いは変わると思います。
③ 「どんなところが心配ですか」と聞く
相手の判断に納得できないとき、意見を返す前に、これを聞いてみてください。
責めるためではなく、相手が何を心配しているのかを、見せてもらうための質問です。
「危ないと思いますか?」と聞くと、答えは「はい」か「いいえ」で終わってしまいます。
「どんなところが」と聞くと、相手は自分の考えを順を追って話せます。
答えを知っているつもりで聞くのではなく、知らないから聞く。
そのほうが、相手の考えに近づけると感じています。
たいていの場合、相手にもちゃんと理由があります。
そして相手の心配が分かると、こちらの持っている情報が役に立つ場面が見えてきます。
「それなら、この時間帯なら大丈夫かもしれません」というふうに。
聞き方を変えても、言いにくさが残ることはあります。場のつくりは、一人で背負うものではありません。まずは、話しやすい相手とのやりとりからでもよいと思います。
まとめ
- 会議で言えなかったのは、勇気があるかないかだけの問題ではありません
- 事実を伝える一言にも、自分が何を心配しているかが表れることがあります
- 意見が通らないことと、心配を聞いてもらえないことは、違います
- 発言してくれた人には、まず感謝を伝える。それが発言しやすい雰囲気や風土につながります
- 同じ情報を見ていても、心配するところが違って意見が分かれることがあります
- 同じ職種の中でも、心配するところは分かれます。だから、言いにくさをつくっているのは職種だけではありません
- 違うところを心配する人がいることで、見落としていたことに気づけます
- 言葉を飲み込むのは介護職だけではなく、職種や立場を問わず「言いにくい相手」がいます
- お互いの心配を出し合うことが、この方のケアを一緒に考える土台になります
- 会議の前に自分の心配を一行書いておき、結論より先にそれを言う。難しければ、事前に進行役や同僚に渡す方法もあります
会議で一度言えなかったからといって、次も言えないわけではありません。
私も、言えた日と言えなかった日が、いまでもあります。
ただ、言えなかった理由が分かっていると、次の会議の前にできることがあります。
一行、書いておく。言語化しておく。
それだけのことですが、その一行があるかどうかで、口の開きやすさがずいぶん変わります。
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