「社会福祉士の国家資格を取得して、何か変わるのだろうか」
正直に言うと、勉強している最中の私自身、そう思っていました。
でも、振り返ってみると、私にとっての大きな変化は、この2つでした。
「今の仕事が深まったこと」
「将来の選択肢が広がったこと」
このシリーズの第1回で、私は社会福祉士を目指した動機を書きました。
そのときに挙げた動機のひとつが、「MSWやPSWといった専門職が何を学んできたのかを知りたい」というものでした。
では、実際に取得してみて、現場で何が変わったのか。
シリーズ最終回となる今回は、社会福祉士を取得した後のリアルな変化を、正直にお伝えします。
良かったことだけではありません。
取ったことで、かえって見えてきた「しんどさ」もありました。
この記事でわかることは、次のとおりです。
- 相談援助の技術や知識が、現場でどう役立ったか
- 多職種連携で感じた、はっきりとした変化
- 介護・看護のスタッフへの関わり方の変化
- 取得して、かえって感じた正直な「しんどさ」(お金の話も)
- キャリアや働き方の選択肢が、どう広がったか
相談援助の技術が「使える知識」になった
いちばん大きかったのは、これまで経験と勘でやってきたことに、理論の裏づけができたことです。
施設ケアマネの仕事は、利用者やご家族との面談の連続です。
これまでは、長年の現場経験から、なんとなく「こう聞けばいい」「こう整理すればいい」とやってきました。
社会福祉士の学びを通して、その「なんとなく」に、名前と理由がつくようになりました。
- 面接のときの座る位置関係(正面か、斜めか)
- 相手の話をどう引き出すか
- 集めた情報を、どんな枠組みで整理するか
- 自分自身の感情は、どのような状態か
こうした一つひとつに、相談援助の理論という裏づけがあると分かったのです。
正直に言えば、制度の歴史的な背景などは、今でも「なんとなく分かった」というレベルです。
すべてを完璧に身につけたとは、とても言えません。
それでも、自分の実践を理論で説明できるようになったことは、大きな自信になりました。
多職種との連携が変わった
これが、第1回で書いた動機の「答え合わせ」になった部分です。
社会福祉士を取る前、私はMSW(医療ソーシャルワーカー)やPSW(精神保健福祉士)の方々と話すとき、「同じ相談援助のはずなのに、何か違う」という、どこか一歩引いた感覚を持っていました。
※ MSW=医療ソーシャルワーカー、PSW=精神保健福祉士(精神科領域などで相談援助を行うソーシャルワーカー)。なお精神保健福祉士は、職能団体が英語略称を MHSW(Mental Health Social Worker)に改めており、MHSWと呼ばれることも増えています。
同じ福祉の話をしていても、専門用語や制度の前提知識の面で、こちらが受け身になりがちだったのです。
それが、取得後は変わりました。
同じ国家資格を持つ者として、対等に話せているという感覚を持てるようになったのです。
相手の使う言葉が分かる。
制度の前提を共有できる。
だから、利用者のために、遠慮なく意見を交わせる。
連携の場面で、自分の立ち位置が一段しっかりとした。
そんな手応えがありました。
介護・看護スタッフへの知識の共有が増えた
変化は、外向きの連携だけではありませんでした。
学んだ知識を、今度は自分のチームの中で、介護職員や看護職員へ伝える場面が増えたのです。
たとえば、ケアの方針を話し合うとき。
たとえば、対応に悩むケースを一緒に考えるとき。
「なぜ、この関わり方が大切なのか」を、根拠を添えて説明できるようになりました。
自分が学んだことを、現場のチーム全体に還元していく。
これは、想像していなかった嬉しい変化でした。
正直なところ:できることが増えた分、業務の重さも感じた
ここからは、メリットの記事ではあまり書かれない、正直なところを書きます。
社会福祉士を取って、できること、考えられることは確かに増えました。
ただ、それは同時に、施設ケアマネという仕事の業務量の多さを、改めて思い知ることにもなりました。
視野が広がるほど、
「本当はここまでやるべきだ」
「もっと、こうしたらいいんじゃないか」
と見えてくる。
でも、現実には、その時間がない。
ちょうどこの時期、現場は人手不足が続いていました。
夜勤の回数は増え、その分、ケアマネ業務にあてられる時間は減っていく。
できることが増えたのに、それを発揮する時間が足りない。
そのギャップに、正直、しんどさを感じた時期がありました。
社会福祉士としての「クライエント第一」、施設ケアマネとしての「利用者本位」という理想と、施設のマンパワーという現実。
その板挟みは、多くの福祉職が通る道なのかもしれません。
資格は、自分の可能性を広げてくれます。
でも、それを活かせる環境かどうかは、また別の話なのだと、身をもって感じたのです。
そしてもうひとつ、お金の話も正直に書いておきます。
私の場合、社会福祉士を取っても、資格手当や昇給はありませんでした。
施設によっては資格手当が出るところもあるようですが、少なくとも私の職場では、「資格を取れば、すぐ給料に反映される」とはいきませんでした。
キャリアの視野が広がった(転職も含めた選択肢として)
そんなしんどさを感じていたある日、私は息抜きのつもりで、介護系の転職サイトに登録してみました。
本気で辞めるつもりだったわけではありません。
「今の自分は、外から見てどう評価されるんだろう」という、軽い気持ちでした。
そこで分かったのは、介護福祉士・ケアマネ・社会福祉士という資格の組み合わせがあれば、働く場所にはかなりの選択肢があるということでした。
特に社会福祉士を持っていることで、これまで考えていなかった分野まで視野に入ってきました。
社会福祉士が活かせる場は、地域包括支援センター、病院(MSW)、障害福祉、児童福祉、行政など、思っていたよりずっと幅広い。
なかでも私の目に新しく映ったのが、行政(市区町村の福祉課など)と、児童分野でした。
※ 社会福祉士が活かせる分野や任用の条件は、自治体・施設・年度によって異なります。具体的な求人条件は、各機関の公式情報や求人情報でご確認ください。
施設の中だけが、福祉の仕事ではない。
そう気づけたことは、私にとって大きな収穫でした。
では、転職したのか。
——今のところ、答えは「ノー」です。
いろいろ見て回った結果、「今の職場も、悪くないな」と思えたからです(笑)
ただ、これは決して後ろ向きな結論ではありません。
外を見て、選択肢を知ったうえで、自分の意思で「ここを選んでいる」。
自分がコントロールしている感覚は、ただ何となく今の場所にいるのとは、まったく違います。
私にとって、社会福祉士という資格は、「今の自分の場所が最適なのか」を確認するきっかけにもなってくれました。
この「登録して、比べて、結局残った」体験の一部始終は、こちらの記事に正直に書いています。
施設ケアマネが転職エージェントに登録してみた|やりとり・身バレ対策・結局残った理由
振り返れば、資格そのものよりも、学ぶ過程と、取得後に視野が広がったことが、私には大きかったのかもしれません。
まとめ|社会福祉士は「今の仕事を深める」資格でもある
全4回にわたってお届けしてきた、社会福祉士の体験記。
最終回となる今回は、取得後の変化を正直に書いてきました。
振り返ると、社会福祉士を取って得られたものは、大きく分けて2つでした。
ひとつは、今の仕事を深める力です。
- 相談援助に理論の裏づけができた
- 多職種との連携が、より充実した
- チームに知識を還元できるようになった
社会福祉士は、転職や独立のためだけの資格ではありません。
むしろ、今いる現場での仕事を、一段深いものにしてくれる資格でした。
そしてもうひとつは、選択肢が広がる安心感です。
- 働く場所の幅が広がった
- 行政や児童分野まで視野に入った
- 「今ここを選んでいる」と思える土台ができた
もちろん、できることが増えた分、業務の重さや、給与に直結しない現実を感じる場面もありました。
そこは正直なところです。
それでも、
「介護職やケアマネとして、これからどうしていこう」
そう考えている方にとって、社会福祉士は、確かな一歩になると思います。
働きながら、子育てをしながら、夜勤をこなしながら。
そんな私でも、取ることができました。
このシリーズが、同じように迷い、悩みながら前に進もうとしている方の、背中をそっと押せたなら嬉しいです。
長い体験記に、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
社会福祉士体験記シリーズ(全4回)
- 第1回:動機と学校選び
- 第2回:勉強方法と2年間のスケジュール
- 第3回:国家試験の対策と当日
- 第4回:取得後の変化・メリット(この記事)
📒 全体像をまとめた完全ガイドもあります:働きながら社会福祉士を取る完全ガイド|動機から合格・取得後まで


